Automatic Dream
「もう、何をクズグズしてたのよぉ」

「別に……」

近くにはポニーが居た。

本来なら、暗くてどこに居るのかさえ分からないはずだと思うのだが、整った顔の細部に至るまではっきり見える。

暗闇で物をはっきり見る為には、光源を持ち込むか、暗視ゴーグルを持ち込むか。

だが当然、後者は無い。

こんな回りくどい言い方をしなくても良かったんだけどな。
白熱電球がぶら下がっている、とだけ言えば良かったんだが。

この面倒臭い話し方は、まぁ癖みたいなもんだ。

とにかく顔がはっきり見えたのは、電球があるから、と言う事だ。

つまり、この下水道は通路として使われた経験が、少なからずあると言う事だ。

良く見りゃ、ちゃんと人が歩けるように鉄製らしき板まで敷いてある。

だが臭いまではどうにもならなかった様だ。
臭い…。

そして暑い。

マンホール内は冬場でも20℃を越えると言うのだから、夏どれほど暑いのかは言わずとも分かってくれ。

雫を成す汗がイヤな感じにワイシャツを湿らせ、俺は元々緩んだネクタイを更に緩める。
暑くて臭い。

こんな所に長居はゴメンだぜ。

脳のどっかをヤられちまいそうだ。
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