Automatic Dream
どう見ても豪華な和風旅館の一室にしか見えないこの部屋の端っこ。
窓枠に腰掛ける浴衣姿のその女は、今朝教室で笑顔と明るい声を振り撒いていたあの女。
夢の中ではユキと名乗り、教室では佐藤真由美と名乗ったあの女。

何だなんだ。
どうなってる。
どうしたってんだ。

秘密基地だ?
どう見たってここはひなびた温泉宿。
浴場からこの部屋までの道程でも変わった点は無かった。

窓の外に広がる風景は山奥を思わせる。
直ぐそばを流れる川の川面に月が写り込み幻想的な雰囲気を醸す。
どこだここは。

って夜かよ。
いつ夜になった。

俺の脳内では色んな意見が飛び交っている。

保守派と急進派とが対立し合い第三次脳内大戦勃発寸前だ。

一次と二次については余り触れるな。
傷口が開くといかん。

「マヌケ面」

何だと。
考え事してただけだ。
まぁ下らない事だったが。

「下らない事考えてるからマヌケ面になるのよ」

もっともだがね。

んん?
何だこの違和感……。

何だろ……どっかで……。

ああ、今朝の夢か。
この異常なまでの現実感の欠如。

「そ、これも夢って訳」

そういや俺、喋って無いな。

そう言う事か。
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