Automatic Dream
「あなた、ネーミングセンス皆無ね」

余計なお世話だ。

佐藤はため息を前置きとして

「中国の想像上のバクの一番の特徴は夢を食べると言う事。しかも悪夢をね。皮を敷いて寝ると邪気を避けるとも言われたわ。」

じゃあ良い奴じゃないか。

「確かにあたし達の言うバクも夢をたべるわ。ところが奴は、悪夢だけを食べる様なグルメでも、それだけで満足する様な少食な奴でも無いの。必要以上に夢を食い散らかすわ」

って事はそれにより何かしらの弊害がある訳か。

「その通り。よく分かったわね」

でなきゃあんたらが居る意味が無いだろ。

「おっかしいわね。学校での成績は良くないって聞いてたけど」

俺もおかしいと思ってたとこさ。

「とにかく食べられる事での弊害がある訳ね。夢を食べられると一緒に記憶も持って行かれるの。と言っても全部じゃ無いわ。忘れそうな記憶、無くしても害の無い程度の思い出を食べるの。どちらかと言えばそっちが本命ね。夢は記憶にアクセスする為の手段に過ぎないの」

ほー。
しかしその程度だったら害でも何でも無いじゃないか。

「そう、今まではね。でも最近になってバクは大事な記憶にまで手を出す様になって来たの。人の心の奥にある大切な想い出まで……」

そう言って彼女はうつむいた。

何かあったんだろうが聞かない事にしよう。

「ありがとう……」

しまった……。
読心か……忘れてた……。

< 41 / 71 >

この作品をシェア

pagetop