Automatic Dream
「……」

拒否権ぐらいあるだろう?
俺は嫌なんだよ。
何をさせるつもりか知らんが、やりたいとは思わん。

大体これ、夢だろ。

「「…………」」

二人は黙ったまま俺を見つめていたが、ゆっくりと目を伏せると

「!」

消えた。
音も無く唐突に。
瞬きをする一瞬に。

消えた。

何だってんだ……一体。
どうすりゃ良いんだよ。

そうか寝てるんだったな、今俺は。

俺は目を閉じた。

起きろ俺。
何してんだ。
目を覚せ。
いつまで寝てるんだよ。
俺はもうこんな世界ゴメンだ。

早く起きてくれ。
頼むよ。

もう嫌だこんなトコ。
出してくれ。

起きろ。
起きて下さい。
頼むから起きて。

起きろ。
起きろ。
起きろ。

………

……



何だ……この臭い。

香水……?

やたらキツい臭いだ……。
誰だ香水なんかバラ蒔いたの。

俺は目を開けた。

フロントガラス越しにモルタル製の壁が見えた。

窓の外からは、間も無く正午を迎えようとする太陽の光が真上から差し込んで来る。

その光に照らされた見慣れた校舎がいつもより大きく見えて、自分の現在位置が通い慣れた高校の校舎裏駐車場だと気付いたのは、バンの後部座席から降りて、校舎に取り付けられ現在11時45分を差している所々錆び付いた時計を見上げた辺りだった。
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