Automatic Dream
全てと言っても、机とイスと窓一つの、味気無い個室の内側だけだが。

「じゃあ、そう言う訳で、よろしく頼むわ」

待て。

どうも、もう帰ってしまう雰囲気なので、

最後に一個だけ、良いか?

気になっていた事を聞いてみる事にした。

「何?」

「あんた、名前は?」

今度は声に出してみる。

よく考えれば俺、一言も喋って無いじゃないか。

若干、失礼な気がした。

あくまで気がしただけだが。

彼女は、少し驚いた様な顔をした。

何故そんな顔をする。

「いや……意外だったから。貴方が失礼とか、考えてるなんて」

そういや心が読めるんだったな……。

しかし、なんだそりゃ?

それこそ失礼じゃないのか?

「ふふっ……ごめんなさい」

「で、名前だよ名前。言えない事にでもなってんのか?」

「いいえ。……ユキよ。よろしくね、ユキ。でも仲良く握手している時間は無いみたい。じゃね」

俺が若干の間、

ほんの一瞬言葉を失っている間に、ユキと名乗った女は、殺風景な部屋と共に消失。

俺は何も無い空間に放り出され、彼女らの行方はおろか、自分の現在位置さえもロスト。

そのまま落ちる様に眠りに就いた。


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