Automatic Dream
「馬鹿な!」

今のは学籍簿を見た俺の声だ。

何故こんな形の音が出たのか。
それは予想した事象とはまるで正反対な事象が発生したからに相違ない。

端的に言えば、学籍簿に俺の名前は無かった。

詳しく言えば、学籍簿の隅から隅まで約40分もの時間を掛けて俺の名前の痕跡を探したが、神代の「く」の字も見付からなかった。

延べ2年半に渡って通った学校の学籍簿に俺の学籍が無いのはどう言う訳だ?

皆の記憶がアレしてしまったと思っていたが、これではまるで俺の頭がアレしたみたいじゃないか。

「気は済んだ?」

済むかよアホンダラ。

「転校初日におかしな言動を吐いて急に意識を失った、あなた結構有名になったみたいよ」

嬉しかないね。

それより説明して貰おうか。
あんたは俺の事覚えてるんだろう?

どう言う事だこれは。

「バクよ。簡単に言えばね。」

ちなみにここは職員室の隣りにある来客用の応接間だ。
表向きは転校生との個人面談で進路とかについてを話している、と言う事になっている。

「言ったでしょ、バクの本命は夢じゃ無くて記憶なの。そしてその食欲は大事な記憶まで及ぶ」

じゃあ、喰われたってのか。
皆から、俺の記憶が。

「そうね」

ちょっと待て。
それだけじゃ納得の行かない部分がある。

俺は学籍簿を指差し

「こいつは一体どう言う事だ」

「今はどうか知らないけど、少なくとも昔のバクは、人間により良い世界で生きて貰いたいと思っていたみたい。この世界は驚く程人間本位に出来ているの。」
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