Automatic Dream
dream in dream
汚れた床に寝そべり汚い木製の天井を見上げながら俺はため息をついた。

結局学校を出てから家に着くまでの間も、何も考えられなかった。

忘れたいと思った。

いっそ俺も全てを忘れ、転校生として生きたいと。

そしてそうでは無い事を嘆き、夢を見れない己の運命を呪った。

夢の中なら俺を覚えている世界と出会えるはずなのだが。

それこそ俺には夢みたい話だ。

今居るこの世界が夢の中って線も考えたが直ぐさま却下。

夢なんか見ないさ、俺は。

いやまぁ、ここ最近何回か見たけどさ。

あれは現実ではないと直ぐに分かった。

そう感じる何かがあった。

だが今は何も感じない。

これは現実の世界。

諦めがつかない、つくはずが無い出来事を諦めなければならないのは相当キツい。

しかし。

しかしだ。

クヨクヨしない、と言うのが俺の俺たる所以。

まぁ今考えたんだけどな。

とにかくだ、こうしていても何も始まらないのは確かなわけで、そして次に何をしたら良いのかと言うヒントも、実はもらっている。

今俺の右手に握られている一枚の紙。

これは応接間から出る時にドアにセロテープで張り付いていたのを剥がしてきた物なのだが、そこにはのた打ち回りながら書いたのではなかろうかと思われる文字が書かれている。

それは11桁の数字、その桁数の数字は携帯電話の番号であることを示している。

状況を鑑みるまでもなくあの女教師が残したものだが、俺はこの死ぬ間際のミミズのような筆跡に見覚えがあった。

俺は昨日からポケットに入れっぱなしになっている紙を取り出した。

ヨレヨレのそれには落書き、もとい地図が描かれている。

寝転んだままその二つを見比べる。

どう考えても同一人物が書いたもの。

点と点が繋がり線になる、みたいな感覚を味わいつつも、やはりあいつかとため息の様な物も出てきた。

それはどうでも良いんだけどさ。

電話番号が書かれていると言う事は連絡しろと言っているわけだよな。

ふむ……。

荷物も向こうに押さえられてる訳だし、今回の出来事に関しても奴らに協力を仰ぐのが得策と思える。

若干癪だがな。


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