Automatic Dream
俺はドアの前に立ち若干躊躇していた。

何故かとは聞くなよ?

玄関の前にどんなヤツが立っていたとしても直ぐさま非常識タイムに突入してしまうのは間違いない訳だし。

しかしまたもや響く催促するような音に、ドアノブへと手を伸ばす。

ドアの向こうにどんなヤツが居たと思う?

「あ……」

その声を発したのは精一杯の背伸びをして呼び鈴を押そうとしている少女の形をした物だった。

「ユキ……?」

力ない問いに俺は頷いて答えた。

「良かった……やっと会えた……」

俺の理解力を軽く超越してのけたその少女はそう言うと俺の腰辺りにしがみついて来た。

メルトダウン寸前の脳で俺は考えた。

しかし出て来るのは粗悪でデキの悪い物ばかり。

とてもじゃないが製品化出来るような代物じゃない。

サッパリだ。

何で俺の名前を?

一体何しに来た?

疑問は尽きない。

が最も気になるのは

「誰だ、お前」

しかしその問いに返答はなかった。

「おい?」

その少女は俺の腰にまとわりついたまま動かない。

死んだのか、とか不吉なことも考えたが、聞こえてくる寝息がそうでない事を告げた上でゲンナリを加速させるので、ホッとしたりとかガッカリしたりとか何か忙しいな、おい。

どうするよ、これ……。

事情も状況も全く飲み込めないが確かなのは、ロクな事にはならないという事だ。

点滅する『充電して下さい』の文字が、俺にそれを確信させた。


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