Automatic Dream
「何言ってんだお前」

俺は言ってやったさ。

「特大のトラブルを持ち込みやがった張本人が、何言いやがる」

ただでさえ大変だってのに。

「ぬしこそ何を言うか!」

反論されようとは思っても見なかったぞ。

「誘拐は犯罪、重罪じゃぞ! ましてこのわしを誘拐など言語道断! 成敗してくれるわ!」

そう言って右掌を俺に向ける少女。

「「………………」」

「……あれ?」

先に沈黙を破ったのは少女の方だった。

良かったよまったく。

痛い沈黙だったからな。

「……で? 何がしたいんだお前は」

「いや、待っておれ! お前なぞこうして……!」

「「………………」」

またかよ。もううんざりだ。

いったい何のつもりだ? 超能力でも使って俺をどうにかしようってのか?

「よう分かったな」

「俺の叔父の経営する病院がこの近くにある」

「わしは正気じゃ!!」

そうか俺が悪かった。謝るから、さっさと家へ帰れ。これ以上問題を増やさないでくれ、頼むから。

「……おかしな奴よ。自分で拐かしておきながら帰れとは……」

良いから帰れ。

「一矢報いず帰れるかっ!」

恩人に一矢報いようとは。最近のガキはなってない。世も末だ。

俺も俺だな。こんなガキ、放っておけば良かった。親切心なんて埃被ったような代物、使うんじゃなかった。こんな誤作動を起こすなんてな。

「恩人じゃと?」

玄関で倒れたお前をそこに寝かしてやったんだよ。ありがたく思え。

「………………」

何やら考え込み始めた。

「んむぅ………………」

何やらうなり始めた。

どうしたら良いんだよ、まったく。
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