Automatic Dream
と、その刹那後ろから何かが俺のすぐ脇をかすめて飛んできた。

それが変形した金属製のドアだと気づいたのは、ドアが壁を破壊し隣の橋田さん宅の汚い築三十年の壁が見えた時だった。

俺の少ないメモリでは処理が追いつかない。

崩れ落ちる壁。足跡のついたゆがんだドア。一体何だってんだ?

んん? 足跡?

確かにそこには足跡。それが意味するのは?

「やっと見つけた……!」

その声に振り向くと、そこにはまたもあの女。夢に出たり教師になったり、そして遂には俺の部屋のドアを蹴破って見せるとは。

玄関で仁王立ちするその女。聞きたいことは山ほどあるが、

「ノックくらいしろ」

冷静を欠きすぎだぞ、俺。こんな事を考えているのだから逆に冷静なのかもしれないが。

「もう……逃がさないわよ……!」

「ほう……『夢喰い』の連中か……」

二人の間には、見えないが確かに存在する何かが渦巻いている。

何が何だか分からんがケンカは止せ。やるなら他へ行ってくれ。

殺気立つ二人。俺の話なんぞ聞いちゃいねぇ。

「やめろ佐藤」

俺は佐藤の前に立った。

「こんなガキ相手に何ムキになってるんだよ、大人げない」

重い金属製のドアを蹴破るような怪力の持ち主と、俺の身長の半分にも満たない少女。どちらを止めるべきかは明白だ。

「どけ……!」

なんちゅう怖い顔だ。マジ怖い。今すぐにでも蹴り殺されそうだ。

だが俺の唇は何を思ったのか、

「どかん。お前とこいつの間に何があったのかは知らんが、こんなことを許せるほど腐っちゃいねぇ」

何言ってんだ俺は。

またしても埃まみれの、正義感なんて代物が誤作動。誰か助けろ。

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