Automatic Dream
ってか、なんで俺が殴られてんだよ。

俺は分析を始めた。

まず現在位置。部屋。これは当たり前。部屋には違いないが、さっきまでいた場所とは微妙に位置が違う。なぜ? なぜ俺は佐藤と少女のちょうど間に居るのか。

俺はさっきまでいた場所を見た。

だが、俺がさっきまでいた場所は無かった。

床ごと、壁ごと、建物ごと何かにえぐり取られた様にごっそりと無くなっていた。

いや違うな。何かに吹き飛ばされたという感じか。驚いて声も出ない。頭の中はこんなに激しく回転してるってのにな。さっき勝手に回りまくった舌はピクリともしない。

しかし舌が麻痺したのは俺だけじゃないらしい。

佐藤も少女も俺と同じような間抜け面をして俺と同じ方を見ている。

俺だけが一足先に正気に戻ったようだ。これはチャンス。状況はまったく飲み込めないが、ここに居てはロクな事にならないのは間違いない。

俺は逃げることにした。こんな所に居ちゃ身も心も持たん。状況の整理も後回しだ。俺は走り出そうとした。

だがコケた。コケたと思った。本当はコケていない。コケるどころか立ち上がってもいなかった。立てないとは思っても見なかった。だからコケたと思った。

立てない? 何故? みぞおちのダメージが足にキたのか?

そう、一番の違和感は足にあった。俺は足を見た。

そこに足は無かった。

真っ赤に染まっていく白い絨毯。両足とも足首より先が無い。

視界は真っ赤だったが、頭の中は真っ白になった。

なんだコレは。痛い。足は? 俺の足。痛い。この絨毯気に入ってたのにな。痛い。足はどこ行った? 靴は? 痛い痛い。探さなきゃ、靴。無かったら新しいのを買おう。痛い痛い痛い。こんなに血が出てる。死ぬのかな、俺。痛い。今日はどんな靴下穿いてたっけ? これじゃ確かめようも無いな。痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイ、

「いってぇぞ」

口から出たのはそれだけだった。

だが固まった二人の解凍には十分だったようで、

「これは……!」

そう言ったのは少女の方。何やら俺の膝辺りを縛り始めた。

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