Automatic Dream
「ぷをっ!」

目を開けようとした俺の顔に何かがぶつかり視界を覆った。ガーゼだと気づいたのはしばらくしてから。それが少女の手によってとり払われた時だった。

「全く。開けるなと言ったであろうが」

足は包帯でぐるぐる巻きにされていた。

「とりあえず止血はした。後はお主次第だ」

あんだけの出血をどうやってこの短時間でとめたと言うのか。答えはすぐ脇に転がっていた。

「……ガスバーナー?」

「ああ。焼いて塞いだ」

おいおいおいおい。マジかよ?! そんなバカな。痛くもなんとも無かったぞ。焼いただなんてそんな……。

……あれ? 痛くない。さっきまであんなに痛かったはずなのに。これっぽちも。

「そもそも痛くなんかは無かったはずじゃ。言ったであろう、気のせいじゃと」

泣いた。さめざめと。泣き濡れた。枕を濡らして泣いた。涙を拭こうと手を目にやったが指は濡れなかった。雨が降っていたのは心の中だけだったらしい。

足が無くなってあんなに血が出ていたのに、痛くないなんてのはどう言うこった。気のせいだなんてどう言うこった。

「人間の心の力と言うのは非常に強いものじゃ」

それは答えになってんのか? もっと詳しく聞こうと思った。が次の瞬間、少女は消失した。一瞬で。瞬きの間に。どうなってる? 何故消えた。聞きたいことは山ほどあるのに。なのに何故? どうして消えた。

ひとしきり焦った後、俺はとりあえずソファに腰掛けた。足首より下が無い状態でソファのところまで行くのは難儀したが。

半分無くなってしまったソファの上で俺は目を瞑って整理を始めた。


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