Automatic Dream
最初からだ。まず最初におかしいのは佐藤がドアを蹴破った事だ。いや吹き飛ばした事だ。あれは人間じゃ無理だ。あいつの足なんて俺より細いのに。

次に俺の腹が殴られた事。全く違う場所に居たはずだ。で、ドアをあんなにしたほどのヤツの怪力で俺がどうにもなってない事。

さらに部屋が半壊になった事。俺の足が無くなったこと。痛みを感じないこと。次から次へと現れた包帯やら何やら。

ひどい目に遭ったな、俺も。こんな目にあって意外と冷静な俺は案外すごいヤツかも知れん。将来は大物になるかも知れん。

全く分からん。と目を開けた時、俺は驚いた。そりゃあもう驚いた。

部屋が元通りだった。

何もかもが寸分狂わずに。そして目の前には、

「気分はどうじゃ?」

言葉遣いの少々おかしいあの少女がいた。

どうなってる? 俺の脳では理解できない。理解できる奴が居たら、そいつは最終解脱でもしたかあるいはヤクでもヤってるんだろう。

「分からんか?」

分かるかアホ。いいか、もう回りくどいのは無しだ。分かり易く一言でだ。それ以上は認められん。

「夢じゃ」

ふむ、一言だな。いや、じゃなくて。

夢? 夢だって? アレが? ドアやら家の半分やら足やらが吹き飛んだアレが?

「ドアも家も壊れてなどいない。足だってちゃんと付いておる。すべては夢じゃ」

にべも無く言うな。しかし全てのつじつまの様な物が一つに繋がった。夢なら何でもありだもんな。夢だって言ってしまえばそれまでである。

いや待ていつ寝たんだよ。

「それはわしには分からん。わしは寝ておったからのう。じゃが今お主がソファに座っているという事は、最後にそのソファに腰掛けたときじゃろう」

最後に……ってお前に布団を取られてすぐ後じゃないか。背中が痛くて寝れなかったはずだが。

「それも夢じゃ。お主は背中が痛くとも寝たのじゃ」

じゃあ、あの見事な月もお前が「よく寝たわ!」って目を覚ましたのも全部?

「ああ、見事なものじゃったぞ。このわしでさえ夢喰い共が現れるまで夢だとは気付かなかった程じゃ。まさかお主が五理夢まで使いこなすとはな。驚いたぞ」


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