想い日和 <短>



私は何故か、もう少し……

もう少しだけ見ていたい。


……近付きたい。



不覚にも、そんな衝動に駆られてしまった。



近付こうか。

でも邪魔かも。


……だけど

気付いてほしい。



コッチ見ろ!

気付け。気付け。


「あー!くっそー。何で気付かないかなぁ」


全く抵抗感のない、フカフカに積もった足跡だらけの雪を

私は、フガフガと何度も軽く踏み付けた。



「……てか私、なぁにやってんだろ」


不意に、こんなことにためらっている自分が、なんだかアホ臭くなってきた。



相手はあの木村。

あの日曜アニメで言ったら、せいぜい山田君のポジションだよ。


何を気なんて使ってんだ、私。



私は、ひょいと身軽に自転車から降りて、軽い足取りで、スタンドを降ろして自転車を固定する。


そして、自転車を支えていたその両手で口元を囲んだ。



「おーい!きーむーらーー!」


外気に触れた息が白に変わって空気に溶けていく。



私の声で、人影の動きが止まった。

私の方を見ているのがわかる。


それから、木村のシルエットは、私に向かって片手を上げた。






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