想い日和 <短>
「こーんな雪の日に何やってんのー!もう真っ暗だよーー!」
「うっせぇよー!」
山に向かって叫んだみたいな私の声に
やまびこみたいな口調の、木村の言葉が返ってくる。
そのまま木村は、私の方に走ってきた。
ぼやけていた木村の影は、どんどん濃くなって
だんだんとはっきりして……
夏から飛んできたのか!と思わずツッコミたくなるほどに
すがすがしい水の粒を顔に浮かばせている。
雪のグラウンドをバックにしてるのは、あまりにも似合わなさすぎて笑えた。
「練習してたの?」
「まぁな」
「なんで一人で頑張ってんの?こんな雪の日に……」
木村の努力だとは知っていた。
だけど私は、素直に“すごいね”なんて褒めてやるほど可愛くない。
「バーカ!自主練に決まってるだろ」
「こんなグラウンドで?まともに土も踏めないじゃん」
「お前ぇー……わかってねぇなぁ。今しっかり根張っとかないと、来年の夏、おっきな花は咲かねぇんだよ?」
……得意気な顔で、満足そうに鼻を鳴らす木村は
やっぱりあの、いつものアホ木村だった。
「……くっさ」
「へ!?やっぱオレ汗臭い!?」
慌てて腕を鼻につけて確認している。