想い日和 <短>



“調子乗ってんじゃないわよ!”

いつもの私なら、そう言って木村の頭をはたく。



でも――

「……ちょっとだけ、ね!」

「……え?」


自分でも、ちょっとキャラじゃないかなって反応をしてしまう。

ほとんど反射。



こんな可愛い言葉が口から飛び出た私に驚いているのは、木村だけじゃない。



きっと……

いつもと違うこの景色のせいだ。



「なぁんてね!」

「はぁ?」

「本気にするな、バーカ!」

「痛って!」



だけど結局、やっぱり最後は恥ずかしさに負けて

お決まりのいつものコース。



「ベンチの万年補欠のくせに何言ってんのよ!」

「くっそ……来年は爆発するから見とけよ!」


憎まれ口に

憎まれ口のお返し。



少し違うのは……

木村から帰ってきた言葉に付いてきた、思いっきりはにかんだ笑顔…


私の胸は、シンと静まり帰ったグラウンドに大きく響いた。



なんだか……

調子狂うな。



薄暗いグラウンドだったけど、近くにある木村の顔は

確かに赤く染まっていた。


多分、私も――



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