想い日和 <短>


「何で?聞いてくれるだけでいいから……」

「駄目!絶対駄目!」

「そんな……」


完全な予想外だった。

私の頭の中では、この一言を伝えるための台本が、出来上がっていたのに……



何度も心の中で反芻させる二文字。

こんな事態にアドリブなんてきかせられないよ。



……だけど――

たとえ木村には迷惑だろうと、私は……


この気持ちを伝える!




“一度やると決めたことは、絶対貫き通す”


そうだ。

その頑固さが、私のいいとこなんだ。



木村がそう私に言ったんだから。


木村に褒められるなんて滅多にないから……

私、よく覚えてるんだからね。



「聞くだけでいいから……聞いてほしいの」

「……」

「……駄目……なの?」

「……」


……ショックだった。

正直、ここまでの拒絶はいくらなんでも考えてなかった。



“恋愛対象に見れない”

そんなどこかしこでよく耳にするような、当たり障りのない答えなら、覚悟はできていた。



なのに……

気持ちすら伝えられないなんて――



参ったな。

私、結構強い方なんだけど……


さすがにお手上げだよ。



……ヤバイ。

泣きそう。


目が……

痛いかも――



< 24 / 31 >

この作品をシェア

pagetop