想い日和 <短>
「なんか、ごめんね。今の話は忘れて!」
「ちょ……」
「じゃ、私先に帰るね!ほら、木村も!寒いから早く帰りなよ。風邪、ひいちゃうといけないからさ!」
精一杯の明るい声で。
いつもの私みたいに。
強くて、頑固で……
男の子の前でシクシク泣くなんて、当然キャラじゃない私を必死に装った。
全く……
いい加減、嫌気がさす。
こんな時ですら、素直になれない自分は
一体なんだっていうんだろうか。
どんな壁が、いつから……
真っ直ぐな私を拒んでしまったのか――
……あぁ、情けない。
声が震えてるのがわかる。
木村に背を向けた瞬間、私の頬にはきっと、惨めな水滴が零れる。
寒さでかじかんだ指先が震える。
私は、制服のポケットに突っ込んでいた片手をギュッと握りしめた。
小さなポケットに忍ばせていたのは、私の想いの半分も詰まりきることのできてない、
小さな小さなチョコレート。
雪みたいに白くて。
だけど今の私には
きっと、苦くて苦しいチョコ――