想い日和 <短>
大丈夫。
ちょっとだけ……
ちょっとだけ悔し涙を流したら、またいつもみたいに戻れるから。
今だけ……
今だけだから――
ほとんど溢れかけた、私の意志を全く無視して溢れてくる、しょっぱい雫。
それを木村だけには見られまいと、せめてものプライドを守るために
私は、この場から早く逃げ出そうと足を踏み出した。
「待てよ!」
「――!?」
私の腕は、踏み出した足に付いて来てはくれなかった。
「……木村?」
木村の手が。
野球をしてる時くらい真剣な、木村の顔が。
行き場を失ったチョコを握り締めた私の腕を、しっかりと掴んでいた。
……だけど
気のせいかな?
少し……震えてる?
寒さのせいなのかな?
「どうし……たの?」
「――たい」
「え?」
「俺が……言いたい。俺に言わせろ!」