想い日和 <短>
とっくに引退したというのに、まだまだ野球部らしい、寒そうな坊主頭でうつむく。
それに比例して、私を掴む木村の手は、更に力強くなった。
……痛いくらいに。
「オレと……」
「……何?」
「オレと付き合え!」
「……え――」
状況把握に3秒。
言葉を理解するのに5秒。
……ヤバイ。
ゴメン、木村……
嬉しすぎるかも。
もっと……
聞きたいかも――
私って最高に……
ひねくれた性格みたいだ。
「……ヤだ」
「え?」
「ヤーだね!」
「……駄目……なのか?」
「だって私、木村の気持ち聞いてないもん」
「は?だから……オレは――」
“わかるだろ?”そう訴えるような仕草で、木村は頭を掻いた。
「ちゃんと言ってくれなきゃわかんないよ」
意地悪言って
本当にゴメン。
だけど私は、一年間も悩んだから。
……私ばっかり、さ。
だからもうちょっと……
あと少しだけ聞かせてほしいの。
どうせ君は、愛の言葉を囁くような器用な奴じゃないんだから……
今を逃したら、もう聞けない気がするんだもん。