想い日和 <短>



そんな私をよそに、千波は固まったまま

教室の隅でフザけている、噂の木村を凝視して、目を丸くしている。



「ねぇ、木村ってあの木村だよね?野球部の……」

「そうだよ。アイツ」


私は、千波の視線の先を指さした。



「いつから!」

「んーと……去年の、今頃……?」

「は?一年間も!?アンタ!何でもっと早く言わなかったの!私にまで」

「……い、いやぁ……だって何か……言い出しにくくって。相手は木村だし……」

「それにしたって……」

「ゔ……ごめんなさい」



千波のジトッとした鋭い視線に、私は

わざとらしく、しおらしく肩をすぼめた。



だけど実は、自分でも驚いていたりする。


どうして自分はこの一年間、誰にも言わずに過ごしてきてしまったのか。

親友にさえ言えずに、過ごすことができたのか……



それから……


何故今、こんなにも、言いたい、言わなきゃ……

って気持ちになっているのか――



イマイチ不思議な事態なのだ。



< 6 / 31 >

この作品をシェア

pagetop