想い日和 <短>
そんな私をよそに、千波は固まったまま
教室の隅でフザけている、噂の木村を凝視して、目を丸くしている。
「ねぇ、木村ってあの木村だよね?野球部の……」
「そうだよ。アイツ」
私は、千波の視線の先を指さした。
「いつから!」
「んーと……去年の、今頃……?」
「は?一年間も!?アンタ!何でもっと早く言わなかったの!私にまで」
「……い、いやぁ……だって何か……言い出しにくくって。相手は木村だし……」
「それにしたって……」
「ゔ……ごめんなさい」
千波のジトッとした鋭い視線に、私は
わざとらしく、しおらしく肩をすぼめた。
だけど実は、自分でも驚いていたりする。
どうして自分はこの一年間、誰にも言わずに過ごしてきてしまったのか。
親友にさえ言えずに、過ごすことができたのか……
それから……
何故今、こんなにも、言いたい、言わなきゃ……
って気持ちになっているのか――
イマイチ不思議な事態なのだ。