想い日和 <短>
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雪なんて滅多にお目にかかれない、この小さな町で
注意報が発令されるほどの白銀の雪が、この街を染めた、去年の2月。
どうしてもやらなきゃならない課題のせいで、私は一人、教室に残っていた。
驚くほどに素早く暮れる冬空。
おそらく、もう誰も残っていない校舎から抜けだして
私は、速足でグラウンドの前を通り過ぎようとしていた。
白い静けさが広がった、雪の積もるグラウンドには、誰もいないはずだった。
なのに――
あれは……
「……木村?」
少し遠い向こうに、私は、動く人影を見つけた。
独特のフォームのせいで、それはすぐに誰かわかる。
いつも隣で部活をしていた陸上部の私は、嫌というほど毎日、野球部を見慣れていた。
たとえ、特に意識をしなくても、日常の風景というものは
無意識のうちに焼き付いていたりするものだ。
記憶として脳内に……
とか、そんな高尚なものなんかじゃなく
……例えば、瞼なんかに。
ましてや、それが自分の知り合いだったりすればなおさら、
意識しなくても、視界に入れてしまったりする。