犬神さまのお嫁さま
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 「――という訳でおうちを追い出された天涯孤独の希彦君はうちの子になったです」

 「なるなぁぁぁっ!!」



 ママの言う『聞くも涙語るも涙な話』を聞いた後、私は絶叫で物語の締めをひっくり返した。

 「なったのです」って過去形にしないで!

 そんな確定事項はない!
 アリナシで言ったら完璧にナシだからそれ!


 人の良い、と言えば聞こえがいいが天然の上に世間知らずのママはただ単に希彦に騙されてるだけ。

 ちゃんと私がママを守らなきゃ!



 「ママそんなの鵜呑みにしちゃ駄目!」

 「だって希彦君、涙ながらにそう話して…ううぅ」

 「思い出し泣きしないで!」



 どうやらママは完璧に希彦の嘘八百を信じているらしい。

 その純粋さ――いや世間知らずさに本当に高校生の娘がいる主婦なのかと頭を抱えたくなった。
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