犬神さまのお嫁さま
 そこまで振り返って考えて私の寝起きの頭が閃いた。

 いや、正直閃きたくなかった。
 閃いた後から後悔の念が押し寄せる。

 えーっと…ぴったりと肌同士くっついている状態です。

 内太腿に何か当たってる。
 熱くて硬い物体。

 希彦に組み敷かれたような状態なので私の太腿の辺りにはヤツの腰付近があるわけで…。


 いや…いやいやいやいや!!

 そんなわけ無い!!
 いくらなんでも『ナマ』で当たってるなんて!!


 爽やかな夏の朝には不似合いなねっとりとした汗が全身から吹き出る。
 イメージで言ったら魔女がホウキに乗って宅配するあのアニメの黒猫!

 猫のぬいぐるみ代わりになった時にワンコに見つかってぶわー!って汗が吹き出てたシーン!あんな感じ!



 「ま、希彦…いや希彦様!後生ですのでどいて下さい!」

 「やだ…もっと…」



 寝ぼけてるのか本気なのか…。
 すごくとろーんとして熱い眼差しで私を捕らえてそのまま首筋に顔を埋める。

 そして耳朶に触れる近さで。



 「…欲しい」

 「!!」



 低く甘ったるい声で吐息混じりに呟かれた。
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