犬神さまのお嫁さま
 「どうしても認めねぇならそういう『事実』を作ってやる」

 「そういう『事実』ってまさか――」

 「初夜って言っても別に夜にこだわる必要ねーだろ。つまりは初めてのまぐあいがあればいいんだから」



 遮光カーテンのお陰で多少薄暗いといっても時間は完璧に朝だ。

 朝からなんて事しようとしてんの!?


 希彦はニヤリと笑ってそう宣戦布告するとゆらりと立ち上がる。
 下半身のアレはもう既に文字違いで「たって」はいるんだけど。

 いやいや!そんな下世話なネタは兎も角、どうにかしなきゃ!


 私がくだらない事を考えている間にも希彦は迫っている。
 距離にしてだいたい3メートル。

 私はベッドの上。
 ベッドの配置は部屋の角なので逃げ場はない。
 背水の陣だ。


 …せ、せめて直視出来る状態なら!

 何も身に纏っていない事に対して全く恥じらいも戸惑いもない希彦はジリジリと距離を縮めてきている。
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