犬神さまのお嫁さま
 「と、とりあえず下半身ぐらい隠しなさいよ!」

 「後で泣いて懇願するぐらい欲しくなるのにか?」

 「な、なるか馬鹿!!」



 希彦のとんでもなく不遜且つ自信満々の回答に聞いてるだけで恥ずかしくなる。

 な、泣いて懇願するくらいって…そんな風になるわけないじゃん!


 一瞬だけ過ぎった淫らな想像を振り払うように私は手近にあった枕やクッションを投げまくった。

 そしてトドメと言わんばかりに使っていたタオルケットも投げつける。

 ぶわっと広がったタオルケットが一瞬だけ希彦の裸体を隠した。



 「ああもう近付かないでよ!それで隠してお願いだから!」

 「まぁそういう初なところもたまんねーけどな」



 「お願いと言われちゃあ仕方ねぇ」と希彦は床に落ちたタオルケットを拾う。
 その拾う姿でさえ優雅に見えるが状況が状況なので余裕はない。

 希彦は拾ったタオルケットを手にしてふわりと腰に巻き付けた。
 その出で立ちは美術の教科書で見たギリシャ神話の彫刻みたい。

 
 大変美しいけど――私の貞操を狙う悪魔だ。
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