犬神さまのお嫁さま
 こういうトコはしっかりはっきりしておかなきゃ!

 だいたい初対面で「俺の子を孕め!」って言ったり嫁呼ばわりとかしてるけどしてるけどただ単にヤリたいだけだろうし。

 好きでもない相手とヤリたいなんて思わないっつーの!



 「希彦だって私の事好きじゃないんでしょ!そーゆー事は好きな人とやりなさいよ!」



 1度止まってしまえば続けれない、そう思って勢いで言い切る。
 どうやらその一言が効いたようで一瞬だけ希彦の瞳が大きく見開かれた。

 それだけじゃない。
 私の腕を掴んだ大きな手が緩む。


 そして刹那、本当にそんな短い間だったと思う。
 希彦の瞳が悲しみを孕んだ、――気がした。

 瞬くより短い間の違和感に気を取られていると緩んでいた手の力が再び戻る。
 それと同時に希彦の瞳がいつも通りの勝気なものになった。
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