犬神さまのお嫁さま

　私が項垂れたままめくるめく少女漫画ワールド(昭和仕様)を脳内で展開していると美沙都と菜穂が「また始まった」と呟いた。



　「まぁ楓は恋愛に関しては乙女脳だからねぇ」

　「出会い方がもうちょっとマシなら、とは思うわ」

　「ホント、もうちょいマトモな出会いなら…」

　「出会いがなんだって？」



　２人の言葉にそうそう、と相槌を打とうとすると後ろから声が聞こえた。


　えっ？と反応するよりも早く後ろから肩に何かが巻きつく。

　それに遅れてふわりと清々しい匂いが流れた。


　木…？ヒノキみたいな澄んだ匂い。

　あ、違うヒノキってよりも色んな木の混じった、森の中で深く呼吸した時に香る綺麗な『森』の匂いみたい。