パープルシャドー
あんた、気付けや。パープルシャドーに。見つめられたらあかんで、心惑されるねん。―真理子
昨晩、無理矢理飲んだ甘ったるいカシスオレンジのせいで前頭葉が軽く痛む。もう時刻は、朝七時前。点けっぱなしのテレビから、「全国のお天気をお知らせします。梅雨が明けた沖縄、九州地方は晴れ。四国から東北地方にかけては、梅雨前線の影響の為、ぐずついたお天気になるでしょう。お出掛けの際には、念の為、折り畳み傘を持って行ったほうが良いですよ。沖縄から東北地方にかけての本日の日中の気温は、平年並。尚、快晴の札幌は今日の最高気温が三十度、真夏日です。麦わら帽子を被って、日射病対策をして下さいねっ」、と目覚ましテレビのお天気お姉さんが愛嬌たっぷりの笑顔で今日も話しかけてくる。盗んでものにしたい彼女の笑顔。毎朝の笑顔チェック終了。まぶたをこすりながら、窓からヒョコッと顔だけを出す。外の天気を窺うと、曇天の梅雨空から、眩しい陽射しが目に入ってきた。緑に染まる街路樹からそろそろ蝉の鳴き声が聞こえてきてもおかしくない。耳をそばだててみたが、聞こえてくるのは朝の雑多なラッシュ音だけ。冷たい朝。昨年のこの時季は、ねっとりとした熱帯夜にやられ、やたら寝付きが悪かった。ガンガンにクーラー全開。こんなの毎日当たり前。でもこっちでは、毛布にくる
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