パープルシャドー
まりぐっすり朝まで熟睡。七月というのに、マジで風が冷たい。夜なんか露出度の高い服でも着て出かけようものなら、男どもの気を引く前に、間違いなく私が風邪を引く。
「この冷たい風は、太平洋から吹き込む『やませ』という風なんだ。いつものことさ。関西からきたばかりの真理子には、寒く感じるかもしれないが、俺ら地元の人間には、もう夏真っ盛りだべぇ、夏の風だべぇよ」、と客のタイソンがニヤけた顔でヤニ臭い息を吐きながら昨晩話していたのを思い出した。前頭葉が痛むのは、こいつのせい。
仙台に移り住んで三ヶ月。大阪にいた頃に比べると随分寒い。ほんまに夏なのか。こっちで私は、露出度の高い服をまだ着ることが出来ない。男どもの気を誘うには有効的なのに。肩のライン、背中のライン、胸の谷間、鎖骨。すべてが男どもの気をそそる武器。
また昨夜も秋田美人のエリカに完敗。エリカに、スタイル、ルックス、愛想のよさ、笑顔、どれ一つとて負けていないという自負はある。なのになんで?悔しい。ミナミでは、毎日ナンバーワンの水あげ、売れっ子嬢、稼ぎ頭。でも、こっちではどうも勝手が違う。関西弁が、東北の素朴な男どもにはきついらしい、ということに最近気が付いた。遠慮
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