【詩集】巡伴記

夢の続きを

   

夕焼けに染まるワイシャツ

逞しい手足 背中

自転車を押す 貴方の横顔




幾通りも考えて

幾度も繰り返した

勇敢な『頭の中の私』なら

こんな絶好のチャンスを逃しはしない




胸の鼓動だけを聞きながら

並んで帰る いつもの下校風景





タイミングを見計らうフリをしながら

結末を先送りにして

たった一つの言葉は

体中を駆け巡る






(あのさ。ちょっといいかな…………。)




切り出すセリフは決めてある

欠けているのは勇気




口にしたら もう

心地よくも物足りない

生温い関係には

戻れない





………





私は今

始まりも終わりもしなかった恋に

別れを告げる












「あのさ。ちょっといいかな。」


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