「「お前が…」」 (明&慶悟)
山ノ井 明
3月1日
3年間通った高校と、今日でお別れ。
城南高校と書かれた石碑。
「明」
この声、忘れるわけねぇ。
「慶悟」
後ろを振り向くと、長身、少し茶色髪、広い肩幅、綺麗な顔……
年齢と同じだけ、今まで一緒だった慶悟がいた。
「よ」
「はよ」
卒業式までハイテンションはなけじゃねぇよな。
いつもならクシャッて笑う慶悟も、今日は苦そうにへらっと笑った。
こいつはいつも元気だった。
一緒に甲子園目指して――……
すげぇアイツと…バッテリー組んで約10年。
俺に不満とか無かったのかなって…
そんな事考えていたら…お前は笑って、励ましてくれたよな。
市別試合には補佐で出たけど…。
市別でもエースをしていたお前は…イキイキしていて、凄かったよ。
慶悟は俺とは違う大学に進学するから…
もぅ……お前の球、
捕れないんだな。
決め球のスライダーも、
隠し球的だけどすげぇチェンジアップも……
捕れねぇんだな。
俺の18年間。
すっと慶悟がいて―――
馬鹿したことしか覚えてねぇよ。