フリージア
母と一緒にいても、お見舞いに友達が来たときも、完璧な笑顔を絶やさず“いつもの明るい私”を演じていただけ。

一人になると沸き上がってくる不安は抑えられない。

臓器移植が簡単だってことは頭では分かっている。

それでも、怖い。怖かった。

そんな不安をふりはらうために歩きたかったのかもしれない。

そして、そんな不安そうな顔を誰かに見られたくなかったからこんなところまで来てしまったんだろう。
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