フリージア
「うん、よろしく」
「……それにしても、よく迷わないね~。私はここまで複雑だと迷っちゃうよ」


今まで私が迷いに迷った複雑な作りの院内をまるで全て把握しているかのような迷いのない足取りでユウタが歩くので、私はちょっと情けないことを口にした。

ユウタが微笑を浮かべて私を見やる。


「僕はずっとここにいるから、いやでも覚えちゃったんだ。これからも外には出られないだろうし」


私の言葉に、彼はまるで明日の天気を話すかのようななんでもない口調で言った。

チクッと胸が痛んだ。
悪いことを口にしてしまった。
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