フリージア

「それじゃ、大人しくしてるのよ」


母は私に短くそう言うと、これから私が世話になる病棟の方々に挨拶をして、すぐに仕事に行ってしまった。

私の病気が命に関わるものではなかったので安心したようだ。

私の病気は心臓を移植すればいいだけの軽いものだった。

臓器移植は、嘗てはかなり高額で、しかも、すぐに移植できる臓器が用意できないということから、なかなか難しいとされてきたらしい。

だけど、今では移植用の臓器は簡単に用意され、盲腸の手術と同じくらいに浸透している。

まったく、いい時代に生まれたものだ。
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