フリージア
「おっそいよ」

「ちょっと寝坊したんだ」
「まったく……」

「ごめんごめん……それよりも、売店に行かない? この間、行けなかったから、最後くらい行ってみたいんだ」

「え?」


ユウタは私の答えも聞かずに半ば強引に歩き出した。

ユウタの力は強く、とうてい私は叶わない。
袖をつかまれたまま、ずるずると引きずられていく。

誰かの見舞いに来たと思われる花束を持ったおばさんがそんな私たちを見て楽しそうに微笑みながら通り過ぎていく。

いつもなら恥ずかしさが勝っただろうが、私の思考はそんなことよりも先ほどのユウタの言葉で止まったままだった。


最後って……
どういう意味?
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