フリージア
私は、無意識のうちに胸に手をやっていた。

薬が切れたんだろうか。
入院してからずっと治まっていた胸がドクンドクンと疼きはじめた。

まるで、気がついてはいけないことだと、体中の細胞が訴えているかのように。

そんなこと、あるはずがない――
いや、あってはならないんだ。

こんなこと考えるなんて私は、オカシイ。

――アリエナイ

――アリエナイ

でも、

もしかしたら――
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