フリージア
「ドクター、来てください!」


そう大きな声ではないが、人を呼ぶのには充分な声量で、ユウタが声をあげる。

私は痛みのあまり廊下をのたうちながらユウタの後ろ姿を見る。

ユウタの声に気がついて走ってくる白い服とさっきの男。

私は、薄れゆく意識をひきとめることに精一杯になっていた。

目に汗が入って視界が霞む。
焦点が定まらない。

ふとユウタが傍にかがみ込む気配がした。
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