フリージア
「……ユウタ、ごめんね」


いなくなってしまった彼に向けるように心臓に手をあてて呟いてみる。

こんな風に、誰かに臓器を与えるためだけに生かされている人は、沢山いるのだろうか?

ずっと何も知らされず、役目を果たすその時のために、人工的に産み出され生かされて。

でも、ユウタは人間だった。
私なんかよりよっぽど彼のほうが人間らしかった。

それなのに、結局、彼には何も残らなかった。

ユウタはただの治療道具としてしか生きられなかった。

結局、私は無力で何も出来なかったんだ。
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