フリージア
子供を安心させるような優しい響き。
医者やナースとそう大差のないものだった。

ユウタにとっては、私はただの患者でありそれ以上の物ではなかったんだろうか?

そう考えるとますます辛さが増して、泣きたくなった。

でも、私の涙は枯れてしまったかのように一滴も出てこない。

悲しくて辛いという気持ちは、もちろんある。

だけど、それ以上に、こうして――ユウタの命を奪ってまで――生きていることが
腹立たしいという気持ちの方が大きかった。

じっとしているのがたまらなく苦痛になって、私は病室を抜けだしていた。

胸が痛むのは……
きっと、手術の傷が原因だけではないだろう。
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