ラブリー
────ピンッ!
「イテッ」
「もうすぐ撮影っつうのに、なに放心状態になってんだよ!」
ボーッとしている俺にサイドから遼の不意打ちのデコぴんが飛んできた。
「うっせぇよ」
「琉生らしくねぇな。なんかあったのか?」
「そんなモンねぇし…」
オレより2つ年上の遼は見た目どうり大人なヤツで
時々、オレの考えていることが、こんなふうにお見通しなところがある。
「もうすぐ撮影がはじめるらしい。早くそのシケた顔直せよ」
「カメラを向けられたら、王子様スマイルなんてできるっつーの!」
「ふーん、それはそれは…さすがは王子様。それはそうと…あの子との撮影だけど、俺が先だってさ」
「………」
「なんつー顔してんだ?琉生の魂が抜けたような…そんな顔。はじめて見た気がする」
「抜けてねぇし…」
「そっか、ならいいけど。じゃぁ俺先に行くわ」
口では強きなことを言いながら、オレの心の中でもつれる糸がさらに複雑に絡まっていき──・・・