繚乱狂宴
「なら、そこに突っ立っている貴方は差詰め新しい患者かしら?」

小夜の視線がこちらを捉えた。

「……そうだ。先日、隣の病室に入院してきた、火野 晶だ」

「聞いてないわ」

心底嫌そうな顔で睨まれる。

「何の用?」

「だから、話をしに来たと」

「貴方と話をする必要性を、私は感じないのだけれど」

流石にここまで言われると、だんだんと怒りの感情が育ってくる。

「そ、そこまで否定しなくてもっ」

「餓鬼は黙ってなさい」

睨みの目が幽へと移動する。

幽は完全に僕の後ろに隠れてしまった。

「私はこの人と喋っているのよ。横槍はいかなる場合でも受け付けないわ」

「……何故、そこまで他人と関わることを拒絶する?」

「それなら、他人と関わってなんになると言うの?」

質問を質問で返される。

「別に。どうもないさ。関わってるだけ無駄、かもしれないな」

「ふぅん。分かってるじゃない」

小夜の口の端が、少しだけ持ち上がる。

「他人なんて、信じるだけ無駄よ。待ってるのは、裏切りだけ」

「裏切り?」

「話す気はないわ」

また小夜の表情が元に戻った。

「あ、あの……小夜、さん……」

「……」

幽はおずおずと顔を覗かせるが、一睨みでまた引っ込んでしまった。

「あ、晶センパイは優しいですから、あの、どうか、その、関わってください」

怯えてるあまり文法が変になっているが、指摘したらよけい変になりそうなので黙っておく。
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