繚乱狂宴
「小夜――――」

しっかりと閉められていなかった扉を手で押し開ける。

小夜は、扉に背を向けるように、窓の方を向きながら、俯いていた。

「小夜――――」

もう一度呼びかけると、小夜は、瞬時に顔だけ振り向く。

その眼は、ひどく、怯えていて。

バケモノでも見るような眼。

その眼も一瞬で変化し、先ほどの睨み眼へと戻った。

「何?」

身体は、こちらへ向かない。

あくまでも、顔だけをこちらへ向け、話だけはできるように。

「もう一度、話をしにきた」

「出て行きなさいと言ったでしょう!」

小夜は怒鳴る。

何故か、焦燥の念が含まれているのが、手に取るように分かった。

「そっちに行ってもいいか?」

「……ダメよ」

小夜は下唇を噛み締め、さらに強く睨む。

そんなことは気にも止めず、歩き出す。

「――――っ! やめてっ!」

小夜が拒絶の言葉を発し、身体を反転させる前に、肩を掴み、小夜の前方の空間を覗き見る。

そこには、綺麗な極彩色の薔薇が、小夜の右手首から咲いていた。
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