繚乱狂宴
「……」

驚愕と憎悪の視線が、視界の端から注ぎ込まれる。

左手に持つ剃刀は、血を滴らせ、

溢れ出た血が、純白のシーツを汚していた。

「小夜」

小夜を見る。

小夜は、嗤っていた。

「……どうしたの? 嘲るなり蔑むなり、好きにしたら?」

「……そんなことする理由がない」

「何を言ってるの? 貴方から見れば、これは立派にヒトとはかけ離れてる行為のはずよ。それとも、世の中の全員がリストカッターとでも言うのかしら?」

小夜の笑みは止まらない。

「軽蔑や侮蔑、蔑視には慣れてるわ。むしろ、ハッキリそう行動してくれた方が助かるわね」

「別に同情する気もない」

「そうよ。それでいいの。同情が一番困るわ」

きっと、

小夜は、

この剃刀で、

何度も何度も、

自分を傷つけたのだろう。

何故。

「何で、こんなことをする」

「死のうとしたからに、決まってるじゃない」

小夜は、悪びれる様子もなく、そう言い放つ。

「ヒトと違うモノの運命は、手に取るように分かる。どうせ辛く生きるのなら、楽しく死んだ方がマシよ」
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