繚乱狂宴
「……死ぬに楽しい、楽しくないがあるとは思えないけどな」

生きるのが辛いから、自殺を望む。

「……貴方には、分からないわよ。『ヒトじゃないモノ』の苦しみなんか」

「ヒトじゃない……その定義はなんなんだ」

「そんなモノ、無いに等しいわ」

「なら、まだあんたはヒトかもしれないだろ」

「巫山戯ないで」

小夜の身体が全て、こちらを向き、思い切り睨まれる。

「別に、僕は、リストカットしようと、ヒトはヒトだと思っている。僕は、あんたをヒトとして見ているが?」

「……そんな詭弁、誰が信じるのよ」

確かに、言っていることは詭弁。

都合のいいことだ。

御託を並べて、どうにかなることじゃない。

「とりあえず、死ぬのなら、止める」

「貴方に止められる筋合いはないと思うけど?」

「確かに、筋合いは無い。でも、目の前でヒトを死なす訳にはいかない」

「…………貴方は、さっきから偉そうに……私の痛みも知らないで……」

「ああ、あんたが背負ってきた痛みは分からないさ。だがな」

小夜の握っていた剃刀を引ったくる。

それを、自らの手首に、押し当てた。
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