繚乱狂宴
「センパイ」

夢と現の淵にいると、現の方から幽の声が聞こえた。

目を開け、身体を起こす。

しばらく横になっていたからだろうか。

倦怠感は、消え去っていた。

視界から読み取れる情報に、幽の姿はない。

「センパイ」

また、声が聞こえた。

今度はハッキリと分かった。

声のした方に身体を向け、カーテンを開ける。

窓の外に、幽が笑いながら立っていた。

「どうした? 外なんかに出て」

窓を開け、幽に問いかける。

「これから、センパイに教えたい場所があるんです。もしよかったら……」

抜け出すのは感心しないが、幽の誘いを断る理由はやはりない。

あまり乗り気はしなかったが、承諾した。

「ありがとうございますっ。じゃあ行きましょうか♪」

嬉しそうに微笑む幽。

僕は窓を全快まで開け、飛び越える。

病院のスリッパがペタペタと音を立てた。

窓を閉め、幽に向き直る。

幽は歩き出していた。

期待と興奮を胸に、幽の背中を追い掛けた。
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