繚乱狂宴
検診が終わった後、僕は喉の渇きを潤すために廊下を歩く。

こんな田舎でも自動販売機があることには驚いた。

歩を進めている間、先ほどの看護師さんの言葉を思い出す。

「年が近い子、か……」

実感が湧かなかった。

ここで見てきたのは殆どが年配の患者さん。

それに、入院している人だって知らない。

それでも心の支えになったりするだろうか。

話相手になるだろうか。





――――いや、だめだ。





そんな物事をいい方向に考えすぎてはいけない。

後悔するのはきっと僕。

期待は鋭い刃なのだ。

外れると、その刃が帰ってくる。

傷つきたくないなら、期待も何もしなければいい。

交流を深めた処で、何も得るモノは無い。

あるのは、別れの際の悲しみだけ。

だから、少しの関係でも、傷つくのだ。

傷つきたくない、だからこそ、僕は独りになる。

「あ、あの……」

不意に、後ろから声をかけられた。

無防備の状態だったからか、身体が瞬時に振り向く。

そこに立っていたのは、点滴台を持った一人の少…………年だろうか女だろうか。

とにかく、性別の判別がし難い風貌を持つ子供だった。

「そっち行くと……壁ですよ?」

子供は言い辛そうに、そう告げた。
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