繚乱狂宴
反射的に幽に駆け寄っていた。

幽の傍に屈み、幽の身体を抱き寄せる。

顔は苦痛に歪み、頭から流れる血が二筋に分かれ、幽を汚していた。

「小夜―――!」

今度は小夜を睨みつける。

ぞ、く――――。

小夜は無関心そうにこちらを見下ろしている。

ように見えた。

違う。

小夜の黒い瞳は、この世を全て吸い込んでしまいそうで、小夜の周りの空間が歪んでいるように見えて、色が、片っ端から無くなって、生きているという感覚が根こそぎ奪われるようで――――。

「ん……」

幽の小さな呻吟で我に返る。

まずは幽を介抱しなければ。

小夜のベッド備え付けられていたナースコールを押し、幽を抱える。

小夜を問い詰めるのは後だ。

幽の華奢な身体と、点滴台を抱え、部屋を飛び出す。

小夜はただ静かに、ただ静かに、こちらを見ていた。

小夜ではない、小夜の眼で。
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