繚乱狂宴
「小夜さん。いますか」

「いないわ」

ノックの返事は完璧な拒絶だった。幽は気にせずドアを開く。

「いないと言ったでしょう」

凄い形相で睨まれる。正直怖い。

「現にいるじゃないですか。それに、いないのなら返事は来ません」

当たり前のことだとは思うのだが、これもセンパイから注意される。

何でも気に障るとか。

そうは思えないのだが、人生経験の差なのだろう。

会話の仕方一つでも、センパイの方が博識だ。

「……何の用? 用が無いなら出て行きなさい。私が貴方を殺す前に」

相変わらず小夜さんは冷たい。

「でも……ボクは小夜さんとお話したいですし……」

「私は話すコトなんて持ち合わせていないわ」

「じゃあ、ボクの話しを聞くだけでも」

また一層強く睨まれた。

「前言を訂正するわ。話すコトも無いし、聞く耳も持たない。目障りだから出て行って」

「うぅ……そんなヒトの五感の内、三つも否定しなくても……」

「五月蠅いわね。とりあえず出て行きなさい」

「……何で、そこまでボクや晶センパイを毛嫌いするんですか?」

「決まってるじゃない。嫌いだからよ」

目線すら合わせて貰えなくなったが、負けじと食い付く。

「でも、ボクは小夜さんとお話ししたいです。小夜さんのこと、もっとよく知りたいし、ボクたちのこと、もっとよく知って貰いたいです」

「私は知りたくも、知って欲しくもない」

「何で、ですか?」

小夜さんはボクを睨みつける。

「興味ないのよ。他人のことには」
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