繚乱狂宴
自分の病室の前に着くと、後ろを振り返ってみる。

「何故ついてくる」

幽は、未だに追い掛けてきていた、

不安そうな顔で、じっと見つめながら。

「あの……ボク、なにか変なこと、言いましたか?」

何故そうなる。

ため息を一つ吐く。

「別に。お前には関係ない」

「で、でもっ。何かご迷惑でしたか?」

ここでハッキリ迷惑だ、と言った方が後々問題も起きなさそうだった。

「……何故僕に関わる」

迷惑、という気持ちは少なからずある。

しかし、理由も聞かずに突き放したとしても、ただ自分が辛いだけだろう。

「……ボク、小さい頃からここにいて、同じ年頃の友達もいなくて……だから」

「慰められたい、という自分の欲望で、他人に関わるというのか」

「う……」

幽は押し黙る。

それでも、引き下がらなかった。

「……そうです。ボクは、欲しいモノも手に入れられませんでした。だから、我が儘なのは承知しています。でも……お願いです。話し相手として、ボクの事、見てくれませんか?」

幽の目は真剣だった。

自分の人生も分からず、ただ時間が過ぎるのを待つ、僕の目とは違って。

「……」

「迷惑なら、構いません。お時間取らせて、すいませんでした」

幽はペコリと頭を下げる。

点滴台を持つ手は、筋が浮かび上がり、体は小刻みに震えている。

自分の欲望が叶えられなかったことに対しての悲哀。

それを噛み殺し、頭を下げる姿を見てて、ひどく、心が痛んだ。
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